天才棋士 羽生善治の「三手の読み」で未来を変える方法
天才棋士の思考を探る
中学にして、プロ棋士となった数少ない存在であり、誰もが認める将棋界のスーパーレジェンド『羽生善治』その伝説は半端じゃない。
羽生善治の将棋伝説がすごすぎ
【天才】将棋の天才羽生善治のエピソードまとめ【将棋】
そして、彼がTED x Tokyoでプレゼンをした際の貴重な動画がこちら。
天才のロジックに触れ、彼の天才たる所以は何なのかを動画を見ながら考えてみましょう。
以下、全文 書き起こし
おはようございます。
今日はTEDxTokyoのほうにお招きを頂きましてありがとうございました。
ただいま紹介頂きました将棋の棋士の羽生 善治です。
私はですね、普段はほとんど黙って考えているという時間が長いんで、こうやって話をするのがあまり得意ではないですけれども、せっかくこういった機会を頂きましたので、自分なりに一生懸命やりたいという風に思います。
今日はですね、棋士というのがどんな風なプロセスで思考をしているのかということについて話をしていきたいという風に思います。
一番の基本になるのが「読み」というものなんですね 「読み」というのは展開を予想するとか、シミュレーションをする先を読むということです。
で、一番最初の何と言うんでしょうかね…
基本中の基本というのがですね 「三手の読み」と言うものなんです。
今、駒3つ出ていますけれども、駒が1個動いて相手がそれに対して反応して、またそれに対して自分はこうするというその三手の読みということですね。
これは将棋に限らず、皆さん方の日常の中でも結構そういうことをたくさんしているんではないかなという風に思います。
通常の場合は1つの選択肢だけを考えるんではなくて、2つ以上の選択肢を考えて、比較をして、判断をするということになります。
例えば皆さん方は今日TEDxTokyoに参加をされていますが、例えば1つ目の選択「TEDxTokyo に参加をする」で二手目、「色んな人の話を聞いて刺激を受ける」で3番目「それをまた 自分自身のアイディアとか発想。これからの生活に役に立てる」というのが1つ目。例えば、「TEDxTokyo に参加をしない」という選択肢もありますね。
参加をしないで今までとはあんまり変わらない。
で、なんか煮詰まってしまう。で、この2つを比較して「じゃあTEDxTokyoに参加した方が楽しそうだから行こう」という風なことを無意識であれ別にそんなこといちいち紙に書いて考えてということではない。
とは思うんですけど、そういう判断というのはしていると思うんです。
で、三手先を読めばいいんだからとっても簡単ではないかという話ではあるんですけれども、これがですね、意外なところに死角があるという風に思っています。
それがですね、ニ手目のところなんですね。
つまり「自分がこうする」「自分がこうしたい」というところは、そこは自分の意志で決まるわけですけれども。
当然、その相手とか色んな物事の対象というものがあるので、それを予想しなくてはいけないということがあります。
例えばですけれども、あるビジネスの交渉の場面で 「値下げをして 何かものを売りたい」 という場面があったとします。
で、この時の三手の読みというのは、まぁ一手目 「値引きをする」 二手目 「相手が喜ぶ」 三番目 「商談が成立をする」 で、これが3つのステップ ということなんですけれども、この「相手が喜ぶ」というのはですね、もしかしたら相手の立場に立って自分の価値観で判断をしているという可能性があるわけです。
相手の人は値引きをするよりも 品質の保証とか 継続性とか あるいは今までの付き合いとか、そういうことを重視するのかもしれません。
ですから相手の立場に立って、相手の価値観で判断をしないと正確な三手の読みと言うわけにいかないわけなんです。
で、この二手目のところで誤ってしまうとその後何十手あるいは何百手読んだとしても…まぁ勝手読みと言って読みとしてはあまり意味がないということになります。
で、実際たくさん読んでいくというのは木の幹と枝に分かれていくようなものなんですけれども…
当然ながらこれがですね指数関数的にものすごい数になってしまいますので、なかなかそれだけでは結論が出せないということがあります。
で、その時に使うのが 「鳥瞰をする」あるいは 「俯瞰をする」という方法なんです。
空を飛んでいる鳥がですね地面を眺めるように大体この辺なんじゃないかな…とか、この辺に来ているんじゃないかな…というような大雑把な感覚的な捉え方ですね。
これは例えば過去からさかのぼって今までを振り返ってどうかという風に見る方法もあります。
今までこういう経路で辿ってきてここに来てるからこれからはどっちに進もうというのもありますし、その1つの状況とか場面を見てこれから先こういう方向性で行けばいいだろうとかこういう方針で行けばいいだろうとか、戦略で行けばいいだろう というようなことが分かると、無駄なことをしなくて済む。
考えなくて済む。ということがあります。
で、例えばですけれども…この会場に来るためには 地図を広げて 渋谷近辺にあるだろう…
ということが分かればですね、遠回りをしたり、寄り道をしたりしなくて済む訳ですけれども、それと同じように大雑把につかむというのが「鳥瞰する・俯瞰する」ということなんです。
この、「鳥瞰する・俯瞰する」という方法は、非常にその感覚的なものなんで大変に便利なものなんですけれども…ただ、それだけに頼ってしまっても、例えば先程の話の例で言うと地図を見て渋谷まで来ることはできたとでも、ここの会場に辿り着くまでにはですね…最終的には歩くなり、エレベーターに乗るなりして色々して一歩一歩ですね着実なロジックの裏付けがあって、そして最終的に目的地。この会場に着くことができるということだと思います。
ですから、もちろん非常にですね…その感覚的なものっていうのは思考のジャンプというのができるので非常に便利なんですけれども…その三手の読みの最終的なですね。
ロジックの裏付けというのも同じくらい重要なんではないでしょうか。
で、またそういう感覚的なものというのはですね、結構他の危機とか「じり貧」とかを 回避するという場面においても非常に役に立つのではないかなという風に思います。
じり貧というのはちょっと聞き慣れない言葉かもしれませんけれども例えば時間が掛かるけれども、あるいは手数が掛かるけれども望みがない局面。勝ち目がない局面のことを『じり貧』って言うんですね。
で、「鳥瞰する・俯瞰する」方法を使ってこの場面でこの選択肢を選んでしまうと『じり貧』に陥ってしまう。
ということが分かればですね、例えリスクが高くても他の選択肢を選ぶということもできるという風に思うんです。
で、そういう感覚的なものまた、ロジックの積み重ねのものというのを車の両輪のようにですね繋ぎ合わせて考えていく。
場面場面、状況状況に応じてやっていくという方が非常にためらいなく、あるいは躊躇なく選択をしていくというためには非常に重要なんではないかなという風に思っています。
で、今は本当にたくさんの情報があって、その中から何を選べばいいかわからないということもあると思うんですね。
つまり、たくさん情報はあるんだけれども選べるのはたった1つだけということがあります。
その1つだけしか選べないっていうことはそれだけ後悔しやすい っていうことでもあると思うんですね。
で、その後悔しやすいことを避けるというかこれは一般的な傾向であると思うんですけれども、やっぱり自分が選ばなかったものに対しては非常に楽観的になって…
で、まだ起こってないこと 未来のことに対しては 悲観的になるっていう傾向があると思うんです。
で、これはその危機管理とかリスクを回避するためには、もちろん、ある程度やってくっていうことは大事だとは思うんですけども…
そこはですね非常に 感情的なことではなくて、冷静に・客観的に見て その過去の自分が 選ばなかったことはですね「本当に選ばなかった方が良かった」っていうことが大部分多いですし、先の心配なことをですね、確かに心配なことはあるけれども それが全部起こるという訳ではないので、そういう中で先程話をした論理的な三手の読みと 「鳥瞰する・俯瞰する」という方法を使っていくということが色んな選択をしていくために役に立つのではないでしょうか。
今日が皆さんにとって充実した日になりますように。
これからの幸運を祈ります。
これで終わります。
どうもありがとうございました。